多様性

サッカーでつなぐ民族を超えた友情と絆 NPO法人 LittleBridgeとの2023年活動報告会を開催!

住まいを通して人を幸せにする世界を創る」をミッションとしているハウスコム株式会社は、『あらゆる多様性を持った人々が、お互いが尊重し合い、幸せに暮らせる世界を創りたい。』というNPO法人Little Bridgeの想いに共感し、2017年から支持しています。

Little Bridgeは、元サッカー日本代表主将の宮本恒靖氏を発起人として2015年に設立されたNPO法人です。

1990年代に起こった紛争によって民族の分断が残るボスニア・ヘルツェゴビナ南部の街モスタルで、異なる民族の子供たちが一緒になって活動できるスポーツアカデミー「mali most(マリモスト)」(現地の言葉で「小さな橋」の意味)の運営を継続してサポートしています。

今回は、2024年1月13日にハウスコム本社で行われたLittle Bridgeの2023年活動報告会についてご紹介します。

各地に残る紛争の惨劇。大好きなサッカーが子供たちの心を強くする。

開催に先立って、宮本氏は令和6年能登半島地震によって亡くなられた方々に哀悼の意を表し、被災された方、そのご家族及び関係者にお見舞いの言葉を述べられました。

また、10月にインターン生として参加したコトミさんは、各地に残る惨劇の爪痕は想像以上で「街が泣いている」と感じたそうです。

しかし、民族の垣根を超えて、夢中でサッカーを楽しむ子供たちを見て「大好きなこと」がどれほど心の支えになるか思い知らされたと当時を振り返りました。

さらに、マリモストのエグゼクティブ・ディレクターであるジェナン・シュタ(Dzenan SUTA)氏が日本政府から外務大臣表彰受賞(ボスニア・ヘルツェゴビナでは3人目)したことを報告、在ボスニア・ヘルツェゴビナ日本大使館からの動画による激励メッセージと続き、Little Bridge代表理事の樋口昌平氏から、現在の世界情勢を鑑みた「開発と平和のためのスポーツ」という視点から今後の活動のあり方についてのお話がありました。

「初対面でもボールを蹴ったら友達」フィールドに溢れる笑顔

ボスニア・ヘルツェゴビナでは1990年代前半に民族同士が争う紛争が起こりました。死者は20万人、難民・避難民200万人が発生したと言われ、第二次大戦後のヨーロッパでは20世紀最悪の紛争と言われています。

紛争は1995年に終結しましたが、30年近くが経過した現在でもボスニア・ヘルツェゴビナには民族の対立感情とその影響が残り、政治システムや教育への影響は計り知れません。子供たちがスポーツをする場も民族ごとによって分かれている事が普通であり、分断が解消される兆しは見えない状況が続いています。

活動報告を行なったユキトさんは、大学時代に「サッカーと民族の関係性」をテーマに卒業論文を執筆した経験もあり、今回のインターンでは民族間の対立を強く認識して臨みました。

しかし、実際に現地で指導をスタートすると、子供たちの間に民族の対立を感じることはほとんどなく、保護者間の関係も良好で、まさに「ボールを蹴ったら友達」そのものだったそうです。

代表理事の樋口氏によると、「アカデミーの活動を始めたばかりの頃は、(紛争で対立した民族の子供たちが)一緒にスポーツをするなんてとんでもない」という保護者も多かったそうで、地道に活動を続けてきてようやく保護者の関係も構築されてきたとのことです。

紛争の記憶がない子供たちはボールを一緒に追いかけたらすぐに仲良くできたそうですが、紛争の記憶が残る保護者たちにとっては簡単ではなかったようで、最初の頃は子供たちの様子を遠巻きに見ているだけでしたが、保護者が子供を待っている間にクラブハウスでコーヒーを飲めるようにしたり、保護者も参加できるフットサルを企画したりなど、運営スタッフの努力が実り、距離は徐々に縮まっていきました。

ただし、マリモストの活動に子供を参加させてくれている保護者は一般的な現地の方々よりかなり理解があるということで、ボスニア・ヘルツェゴビナの南部にある都市モスタルには街の中心を流れるネレトヴァ川を挟んでまだまだ民族間の対立が残っているとのことです。

ボスニア・ヘルツェゴビナで一番人気のあるスポーツはサッカーですが、モスタルはヨーロッパで一番暑くなる街で芝生が育ちにくいそうです。そのため子どもたちがサッカーを楽しめるグラウンドはコンクリートの硬いピッチがほとんどです。

マリモストの活動拠点であるSCカンタレバッツは街の中心に位置していますが、以前はコンクリートのピッチでほとんど使われる事がなかった施設だったそうです。

宮本氏が外務省に何度も足を運び、日本政府による平成26年度草の根文化無償資金協力「スポーツ活動を通じた地域融和のためのモスタル市スポーツセンター改修計画」の採択に至り、2016年10月にSCカンタレバッツはコンクリートから人工芝のグラウンドに生まれ変わりました。良い環境でトレーニングができることからマリモストだけでなく市内のサッカークラブも利用しており、川の東西に関係なくマリモストの活動以外にも民族交流の機会が増えています。

さらに、最近は、現地の女子サッカープレイヤーが最初に所属するクラブとして、マリモストの人気が高まっており、ボスニアの強豪女子クラブであるFK EMINAとの連携もマリモストの知名度をあげています。

ユキトさんによると「国民性もあるかもしれませんが、ボスニアの子供たちは勝つことに対する執着が凄く強い。練習メニューに1対1を取り入れたところ夢中になって取り組んでいました。技術向上は勿論ですが、子供たちが民族に関係なく一緒になってサッカーをする機会を提供するマリモストの活動は紛争後のボスニア・ヘルツェゴビナの社会にとって小さくないインパクトを与えられると思います。今後も現地で子供たちとサッカーがしたいです。」と笑顔で語りました。

2014年2月、発起人である宮本氏と彼の大学院の同期生たちが「スポーツを一緒に楽しむことで、民族間の対立感情をなくしていけないか」という信念を胸にこのプロジェクト設立に向けてモスタルを訪問してから10年の歳月が流れました。

現在、マリモストには、ボスニア系、クロアチア系、セルビア系、その他の民族を含む約80人の子供たちが所属し共にボールを追いかけ友情を育み、子供たちだけでなく保護者同士も交流を深めています。

現地の言葉で「小さな橋」を意味する「マリモスト」は、民族の心の懸け橋として、子供たちの友達や家族、地域社会をしっかりとつなぎはじめています。

終わりに

当社は持続可能な社会の実現に向けて、企業・行政・NPOといったセクターの垣根を超えて、社会課題に取り組む必要があると考えています。

今後も当社はマリモストを支援するLittle Bridgeの活動を支持すると共に、地域社会でもっとも人によりそう住まいのデザインカンパニーを目指し、さまざまな社会貢献活動に取り組んでいきます。